「耳の日」記念公開講演会

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、Webにて開催させていただきます。
パソコンやスマートフォンからご視聴いただきます。

耳の日について

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 京都府地方部会長
京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授

大森 孝一

3月3日は「耳の日」です。「耳の日」は、聞こえと言葉に障害がある方のために少しでもお役に立ちたいという願いを込めて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の提案により昭和31年(1956年)から始まりました。毎年「耳の日」に、都道府県ごとに、難聴で悩んでいる方々の相談や、一般の人びとにも耳の病気のことや、健康な耳の大切さを知っていただくための活動を行っています。今年で69回目になります。ちなみに、3月3日は、電話の発明者であり、ろう者の教育者であったグラハム・ベルの誕生日でもあります。

新型コロナウイルス感染症の流行により、人が集まれなかったことからデジタルトランスフォーメーションが一気に進み、オンラインでの講演会が普及してきました。多くの方に視聴してい頂けるメリットがあります。

「耳の日」記念公開講演会では、まず耳の仕組みや耳の病気についてお話しし、高齢者の難聴、補聴器の選び方と使い方について解説します。この様な講演会を通じて、耳の大切さをわかっていただき、困っている症状の解決に少しでもお役に立てればと思います。この4年間、非接触の非日常を体感すればするほど、人と会って話をすることの大切さを痛感しています。そして人の声を聞いたり理解するにはやはり耳は大切です。

今年は4年ぶりに「耳と補聴器の相談会」を京都府医師会館において対面形式で開催いたします。耳鼻咽喉科頭頸部外科の医師が、市民の皆さんからの耳の病気、特に難聴や補聴器に関する相談を承ります。日常生活で気をつけることから最先端の医療まで、できるだけ分かりやすくお伝えできるものと考えております。

講演1
   
大森 孝一先生

耳を大切に

京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授

大森 孝一 先生

人と人とのコミュニケーションには言葉を聞くことと話すことが大切です。そのため、耳はとても大切な感覚器官です。耳は外耳、中耳、内耳に分けられます。耳の入り口は外耳道といわれ、その奥に鼓膜があります。鼓膜の奥は中耳といわれ、さらに奥には、内耳と呼ばれる部位があります。内耳には音を聞くための蝸牛と、からだのバランスをとる前庭や半規管とがあります。音は外耳道から入って鼓膜を振動させ、その振動が中耳にある3つの耳小骨に伝わって、蝸牛に伝わります。そして、蝸牛の有毛細胞に振動が加わると、細胞が興奮して電気信号に変換され、聴神経へ伝わり、さらに脳へ伝えられます。この信号が、脳の中で音や声や言葉として認識されます。

鼓膜や耳小骨など中耳に問題がある難聴は伝音難聴と呼ばれ、薬や手術によって改善できる場合があります。急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎などがこれにあたります。最近、伝音難聴に対する手術は大きく進歩しています。内視鏡を使った中耳炎の手術や、鼓膜穿孔に対する鼓膜の再生療法が保険診療でできるようになり、それぞれの患者さんに適した手術を選びやすくなりました。

一方、内耳にある蝸牛やその奥の神経に問題がある難聴は感音難聴と呼ばれます。急性感音難聴と言われる突発性難聴、騒音性難聴などでは発症後、できるだけ早くに治療する必要があります。急に聞こえが悪いと感じたら、急いでお近くの耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を受けてください。

遺伝性難聴などで生まれながらに重い難聴があると、言葉を覚える過程に支障が出ることがあります。そのため、赤ちゃんや子供さんの難聴をできるだけ早く発見して、補聴器や人工内耳で聞こえを補ったり、言語訓練で発音をなおしていく必要があります。まず赤ちゃんが生まれたら産科施設で新生児聴覚スクリーニングをお受けください。また、年をとって聞こえが悪くなる加齢性難聴では、コミュニケーションが取りにくくなると、生活の質が低下します。中年期の難聴があると、認知症のリスクが高くなることもわかってきました。一部の方には補聴器を装用し続けることで認知症のリスクを軽減することも報告されています。

講演ではまず聞こえの仕組みと耳の病気について解説し、乳幼児の難聴と家庭でできる検査、高齢者の認知症と難聴の関係、補聴器や人工内耳についてもお話しします。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、市民の皆さんに、健康な耳で日常生活を楽しんで頂くための活動を行っています。皆さん、耳ときこえを大切にして下さい。

講演2
   
中村 高志先生

「高齢者の難聴~補聴器の選
び方と使い方~」

京都府立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室
助教

中村 高志 先生

家族との会話やTVの音声など、私たちは普段無意識のうちに聴覚を通じて多くの情報を得ています。これらの情報は日常生活を豊かにし、コミュニケーションの基盤を形成しています。しかし、年齢を重ねると共に、これらの音の情報をはっきりと聞き取ることが難しくなります。初期には相槌を打つことや笑いでごまかすことがありますが、やがては会話によるコミュニケーションを諦め、引きこもってしまう人もいるでしょう。この結果、脳への新たな刺激が減少し、うつ病や認知症のリスクが高まるという研究結果もあります。このため、加齢に伴う難聴への適切な対応は、聴覚の回復だけでなく、健康的な高齢者生活を送るための重要な手段と言えます。

補聴器の使用は、この問題に対する主要な解決策の一つです。本講演では、聴覚のメカニズム、高齢に伴う聴覚の変化、及びそれによって生じる問題点について明確にします。また、補聴器の役割と最新技術について解説します。補聴器の選択や使用には専門家のアドバイスが不可欠です。補聴器相談医の診察を受けた後、認定補聴器技能者である補聴器専門店のスタッフに相談することで、最適な選択と調整を実現できます。さらに、補聴器は初めて装用した日からすぐに快適に聞こえるわけではありません。これは眼鏡とは大きく異なります。新しい聞こえ方に慣れるための適応期間と、そのためのリハビリテーションの重要性についても詳しく説明します。

私たちがこれからの高齢社会を豊かに生きるためには、難聴とその対策に関する知識と理解を深めることが必要不可欠です。本講演を通じて、高齢者を中心とした難聴者やその家族、関心を持つ市民の皆様に、質の高い社会生活を実現するための情報と知識を提供したいと思います。


3月 3日(日) 13時30分
オンデマンド配信開始

第69回耳の日記念公開講演会の開催告知チラシは以下よりダウンロードの上ご利用ください

第69回耳の日記念公開講演会の開催告知チラシ
「耳の日」記念公開講演会

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、Webにて開催させていただきます。
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耳の日について

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 京都府地方部会長
京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授

大森 孝一

3月3日は「耳の日」です。「耳の日」は、聞こえと言葉に障害がある方のために少しでもお役に立ちたいという願いを込めて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の提案により昭和31年(1956年)から始まりました。毎年「耳の日」に、都道府県ごとに、難聴で悩んでいる方々の相談や、一般の人びとにも耳の病気のことや、健康な耳の大切さを知っていただくための活動を行っています。今年で69回目になります。ちなみに、3月3日は、電話の発明者であり、ろう者の教育者であったグラハム・ベルの誕生日でもあります。

新型コロナウイルス感染症の流行により、人が集まれなかったことからデジタルトランスフォーメーションが一気に進み、オンラインでの講演会が普及してきました。多くの方に視聴してい頂けるメリットがあります。

「耳の日」記念公開講演会では、まず耳の仕組みや耳の病気についてお話しし、高齢者の難聴、補聴器の選び方と使い方について解説します。この様な講演会を通じて、耳の大切さをわかっていただき、困っている症状の解決に少しでもお役に立てればと思います。この4年間、非接触の非日常を体感すればするほど、人と会って話をすることの大切さを痛感しています。そして人の声を聞いたり理解するにはやはり耳は大切です。

今年は4年ぶりに「耳と補聴器の相談会」を京都府医師会館において対面形式で開催いたします。耳鼻咽喉科頭頸部外科の医師が、市民の皆さんからの耳の病気、特に難聴や補聴器に関する相談を承ります。日常生活で気をつけることから最先端の医療まで、できるだけ分かりやすくお伝えできるものと考えております。

講演1
   
大森 孝一先生

耳を大切に

京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授

大森 孝一 先生

人と人とのコミュニケーションには言葉を聞くことと話すことが大切です。そのため、耳はとても大切な感覚器官です。耳は外耳、中耳、内耳に分けられます。耳の入り口は外耳道といわれ、その奥に鼓膜があります。鼓膜の奥は中耳といわれ、さらに奥には、内耳と呼ばれる部位があります。内耳には音を聞くための蝸牛と、からだのバランスをとる前庭や半規管とがあります。音は外耳道から入って鼓膜を振動させ、その振動が中耳にある3つの耳小骨に伝わって、蝸牛に伝わります。そして、蝸牛の有毛細胞に振動が加わると、細胞が興奮して電気信号に変換され、聴神経へ伝わり、さらに脳へ伝えられます。この信号が、脳の中で音や声や言葉として認識されます。

鼓膜や耳小骨など中耳に問題がある難聴は伝音難聴と呼ばれ、薬や手術によって改善できる場合があります。急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎などがこれにあたります。最近、伝音難聴に対する手術は大きく進歩しています。内視鏡を使った中耳炎の手術や、鼓膜穿孔に対する鼓膜の再生療法が保険診療でできるようになり、それぞれの患者さんに適した手術を選びやすくなりました。

一方、内耳にある蝸牛やその奥の神経に問題がある難聴は感音難聴と呼ばれます。急性感音難聴と言われる突発性難聴、騒音性難聴などでは発症後、できるだけ早くに治療する必要があります。急に聞こえが悪いと感じたら、急いでお近くの耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を受けてください。

遺伝性難聴などで生まれながらに重い難聴があると、言葉を覚える過程に支障が出ることがあります。そのため、赤ちゃんや子供さんの難聴をできるだけ早く発見して、補聴器や人工内耳で聞こえを補ったり、言語訓練で発音をなおしていく必要があります。まず赤ちゃんが生まれたら産科施設で新生児聴覚スクリーニングをお受けください。また、年をとって聞こえが悪くなる加齢性難聴では、コミュニケーションが取りにくくなると、生活の質が低下します。中年期の難聴があると、認知症のリスクが高くなることもわかってきました。一部の方には補聴器を装用し続けることで認知症のリスクを軽減することも報告されています。

講演ではまず聞こえの仕組みと耳の病気について解説し、乳幼児の難聴と家庭でできる検査、高齢者の認知症と難聴の関係、補聴器や人工内耳についてもお話しします。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、市民の皆さんに、健康な耳で日常生活を楽しんで頂くための活動を行っています。皆さん、耳ときこえを大切にして下さい。

講演2
   
中村 高志先生

「高齢者の難聴~補聴器の選び方と使い方~」

京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室 助教

中村  高志 先生

家族との会話やTVの音声など、私たちは普段無意識のうちに聴覚を通じて多くの情報を得ています。これらの情報は日常生活を豊かにし、コミュニケーションの基盤を形成しています。しかし、年齢を重ねると共に、これらの音の情報をはっきりと聞き取ることが難しくなります。初期には相槌を打つことや笑いでごまかすことがありますが、やがては会話によるコミュニケーションを諦め、引きこもってしまう人もいるでしょう。この結果、脳への新たな刺激が減少し、うつ病や認知症のリスクが高まるという研究結果もあります。このため、加齢に伴う難聴への適切な対応は、聴覚の回復だけでなく、健康的な高齢者生活を送るための重要な手段と言えます。

補聴器の使用は、この問題に対する主要な解決策の一つです。本講演では、聴覚のメカニズム、高齢に伴う聴覚の変化、及びそれによって生じる問題点について明確にします。また、補聴器の役割と最新技術について解説します。補聴器の選択や使用には専門家のアドバイスが不可欠です。補聴器相談医の診察を受けた後、認定補聴器技能者である補聴器専門店のスタッフに相談することで、最適な選択と調整を実現できます。さらに、補聴器は初めて装用した日からすぐに快適に聞こえるわけではありません。これは眼鏡とは大きく異なります。新しい聞こえ方に慣れるための適応期間と、そのためのリハビリテーションの重要性についても詳しく説明します。

私たちがこれからの高齢社会を豊かに生きるためには、難聴とその対策に関する知識と理解を深めることが必要不可欠です。本講演を通じて、高齢者を中心とした難聴者やその家族、関心を持つ市民の皆様に、質の高い社会生活を実現するための情報と知識を提供したいと思います。

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3月 3日(日) 13時30分
オンデマンド配信開始

第69回耳の日記念公開講演会の開催告知チラシは以下よりダウンロードの上ご利用ください

第69回耳の日記念公開講演会の開催告知チラシ